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猫の糖尿病について|肥満対策と定期的な健康診断が大切

猫も糖尿病を発症することをご存じでしょうか?
この病気は血液中のブドウ糖である「血糖」が増えすぎてしまう病気です。正常では、膵臓から分泌されるインスリンによって、血液中の血糖値は適切な量に維持されています。

しかし、インスリンが不足したり、その効果が低下したりすることで血糖値が異常に高くなることで糖尿病を発症します。
糖尿病を放置してしまうと、最悪の場合、昏睡状態に陥り、生命に関わる状態に至る可能性もあるため、早期の発見と適切な治療が非常に重要です。

今回は猫の糖尿病について原因や症状、治療方法などをご紹介していきます。


■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

原因

糖尿病は、膵臓から分泌するインスリンの不足や作用の低下により血糖値が適切に調整されなくなることで引き起こされます。
この病気には主に2種類あり、犬ではインスリンを生成できない1型 が多いのに対し、猫ではインスリンを生成することはできるが作用しない2型が多いといわれています。

まだ分からないことも多い病気ですが、猫で見られる糖尿病の原因には、以下のようなものがあります。

肥満:インスリン自体の効きが悪くて高血糖が続いてしまい、糖尿病を発症してしまうことがあります。

膵炎:炎症によって膵臓の本来の構造が壊されてインスリンが作れなくなり、糖尿病を発症します。

医原性:他の病気の治療で施された処置や投薬が、糖尿病を引き起こす場合があります。

ストレス:慢性的なストレスが高血糖につながり、糖尿病の重症化を促すことがあります。

その他にも、持続的な炎症や激しい炎症(口内炎、胆管炎、皮膚炎など)なども糖尿病を引き起こす可能性があるとされています。
さらに、先端巨大症(下顎骨が前方に突出したり、四肢末端が腫大したりする病気)、甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患や腫瘍の存在も糖尿病を引き起こす要因として知られています。

猫の甲状腺機能亢進症についてはこちらで解説しています

また、犬と比較すると猫は糖尿病にかかりやすい傾向にあるため、飼い主様が愛猫の生活習慣に注意を払い、健康的な体重を維持することが大切です。


症状

猫の糖尿病は病気の進行に伴って症状が変化し、初期と末期でその症状は大きく異なります。

初期段階では、猫の糖尿病は症状が目立たず、進行も遅いことが多いため、飼い主様が病気に気づかないことがしばしばあります。
しかし、血糖値が上昇するにつれて、多飲多尿や多食などの兆候が現れ始めます。特に、食欲が増えても体重が減少する状況は、糖尿病を疑う重要なサインです。
さらに、細菌性膀胱炎や皮膚炎といった感染症にかかりやすくなることもあります。膀胱炎の場合は、頻繁なトイレの使用、排尿時の苦痛、血尿が見られることがあります。

膀胱炎などの下部尿路疾患(FLUTD)についてはこちらで解説しています

病気が末期に進むと、腎機能障害、肝疾患といった深刻な合併症を伴うことがあります。この段階では、歩行の不安定、下痢、嘔吐、食欲不振などの症状が出ることがあり、毛並みも悪化します。
極めて重篤なケトアシドーシスという状態になると、嘔吐や神経障害、昏睡、呼吸困難などが起こり、命を落とす恐れもあるため、速やかな治療が求められます。


診断方法

診断には、主に血液検査と尿検査が用いられます。血液検査では血糖値の測定とインスリンの効果を調べ、尿検査では尿中の糖やケトン体の有無を確認します。

ただし、猫は病院での緊張や興奮によって血糖値が一時的に上昇することがあるため、高血糖が必ずしも糖尿病を意味するわけではありません。このため、単一の検査結果だけでなく、総合的な状況を考慮することが重要です。
特に、長期間の血糖値の状況を把握したい場合、血中の糖化アルブミンやフルクトサミンという値を評価することで、過去2〜3週間の平均血糖値が分かります。


治療方法

治療は、血糖値のコントロールと合併症の発生を予防するために、インスリンの投与、食事療法、運動の組み合わせが重要です。

<インスリン治療>
インスリン量が少なすぎると糖尿病の症状を十分にコントロールできませんが、多すぎると低血糖症を引き起こすリスクがあります。
飼い主様は、インスリン注射の実施だけでなく、猫の食事摂取量、飲水量、尿量の変化を注意深く観察し、日常の体重管理にも配慮する必要があります。

<食事療法>
猫にも糖尿病用のフードがあり、血糖値の急激な上昇を抑え、猫が必要とする栄養をバランスよく提供するように作られています。
食事療法を行う際は、始めに指定された食事プランを続けていくのではなく、猫の健康状態や体重、食欲の変化、他の基礎疾患などに応じて、食事内容を調整していく必要があります。
そのため、猫の状態に応じて定期的な健康診断や検査を受け、適切な食事プランへの変更が必要です。

予防法やご家庭での注意点

糖尿病の予防には、バランスの取れた食事、適切な運動量、そしてストレスの少ない生活が効果的です。
また、定期的な健康診断を受けて、早期発見に繋げることも大切です。


まとめ

糖尿病は、一度かかると生涯つきあう必要があります
初期段階で適切な治療を開始すれば、状況によっては数か月後にはインスリン注射が不要になるケースもあります。しかし、この病気の初期症状は比較的微妙で、食欲の増加、多飲多尿、軽度の体重減少といった症状に留まるため、発見が遅れがちです。

そのため、愛猫の日常生活の中で小さな変化にも注意を払い、疑わしい症状が見られた場合は早めに動物病院を受診しましょう。



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